Thunderbird 102.0 がリリースされた
Mozilla は米国時間 2022 年 6 月 28 日、新機能の追加及び安定性の問題を修正した Thunderbird のメジャーアップデート版である Thunderbird 102.0 をリリースした。
Thunderbird 102.0 は Firefox 102 と同じレンダリングエンジンを搭載しており、バックエンドも Firefox ESR 102 相当となっている。
テスト目的での利用ではないユーザーは、現時点では Thunderbird 102 へ更新するべきではない。Thunderbird 102 は、thunderbird.net からの直接ダウンロードによってのみ提供され、Thunderbird 91 系列およびそれ以前からの自動アップグレードは行われない。今後リリースされるバージョンにおいて、自動アップグレードが行われる予定である。
Thunderbird 102.0 での新機能や改良点は次のとおり。
新機能及び改良点
- 新機能
- アップグレード後の移行タスク完了に長時間かかる場合、メッセージを表示するようになった
- 新機能
- スペイン語 (メキシコ) ロケールを追加
- 新機能
- About: ダイアログに新機能へのリンクが表示されるようになった
- 新機能
- プロファイルのインポート/エクスポート UI が更新され、タブで表示されるようになった
- 新機能
- OpenPGP のデバッグのためのコマンドラインツールを追加
- 新機能
- OpenPGP サポートとシステムの librnp ライブラリーからビルドされるようになった
- 新機能
- OpenPGP で暗号化されたメッセージを恒久的に復号してフォルダーに保存するオプションを追加
- 新機能
- OpenPGP: メッセージに添付された公開鍵と Autocrypt ヘッダーを将来のために保存するようになった
- 新機能
- メッセージ作成ウインドウにおいて、宛先の OpenPGP 鍵が期限切れの場合にその旨が表示されるようになった
- 新機能
- OpenPGP 鍵のアシスタントが既定で有効化された
- 新機能
- OpenPGP 鍵のプロパティ上で、鍵サーバーからの更新を行えるようになった
- 新機能
- アプリ内ナビゲーションのためのスペースツールバーを追加
- 新機能
- カスタマイズによって編集ツールバー上に OpenPGP および S/MIME の署名のためのボタンを置けるようになった
- 新機能
- メッセージ作成ウインドウのコンテキストメニューにおいて “すべてのアドレスを選択” をサポート
- 新機能
- メッセージ作成ウインドウにおいて複数のスペルチェック辞書を同時に利用可能となった
- 新機能
- 「スペルチェック辞書を追加」アイテムをメッセージ作成ウインドウに追加
- 新機能
- メッセージ作成時に多くの公開宛先がある場合の警告をより積極的に行うための設定オプションを追加 (
mail.compose.warn_public_recipients.aggressive
) - 新機能
- インポートタブからの現在のプロファイルのエクスポートをサポート
- 新機能
- アドオンマネージャーに戻る/進むためのキーボードショートカットを追加
- 新機能
- アドレス帳の UI の更新およびバックエンドのオーバーホール
- 新機能
- sqlite 形式のアドレス帳のインポートをサポート
- 新機能
- 区切り文字としてセミコロン (;) を使用した CSV 形式のアドレス帳のインポートをサポート
- 新機能
- 該当するニュースサーバー向けの設定が行われていないアカウントでも news:// 形式の URL を開けるようになった
- 新機能
- Google トークのチャットアカウントへの OAuth2 によるログインをサポート
- 新機能
- Matrix チャットのサポートを既定で有効化 (ベータ段階の機能)
- 新機能
- プレビューなしにシステムダイアログを使用して印刷を行うことができるようになった (
print.prefer_system_dialog
をtrue
に) - 新機能
- 予定を削除するときに確認のためのプロンプトが表示されるようになった
- 新機能
- Today ペインに表示される予定のうち直近のものについて、予定までの待ち時間が表示されるようになった
- 新機能
- 繰り返しの予定と、繰り返しの予定のうち 1 回限りで変更されている予定に対してアイコンが表示されるようになった
- 変更
- SMTP クライアントにおいて、QUIT コマンド発行後のソケットエラーを無視するようになった
- 変更
- Javascript による POP 実装を既定で有効化
- 変更
- 「更新に失敗」ボタンをクリックすると、Thunderbird のウェブサイトのベータ版あるいはリリース版固有のページに誘導されるようになった
- 変更
- 「迷惑メールについて」ダイアログをサポートページへのリンクで置き換え
- 変更
- macOS: アカウント設定をアプリケーションメニューへ移動
- 変更
- 新規プロファイルでスレッド表示を既定に
- 変更
- 既に鍵が利用可能な場合に「OpenPGP 鍵を検索」コンテキストメニューを表示しないようになった
- 変更
- 添付ファイルのインライン表示が有効な場合、重複する OpenPGP 暗号化された添付ファイルを表示しないようになった
- 変更
- メッセージ作成ウインドウの暗号化のトグルボタンを暗号化のオプションボタンに置き換え
- 変更
- OpenPGP 鍵の「このメールだけ受け入れ」ダイアログがより多くの状況で表示されるようになった
- 変更
- OpenPGP 鍵マネージャーのダイアログのレイアウトを改善
- 変更
- データ損失を防ぐため、OpenPGP 鍵リングへのデータ書き込み中は Thunderbird を終了しないようになった
- 変更
- メッセージに自動的に OpenPGP 鍵を添付する場合、署名を行わないようになった
- 変更
- メッセージ作成ウインドウにおいて、メッセージの暗号化が可能であるにもかかわらず有効化されていない場合に通知バーが表示されるようになった
- 変更
- インライン形式での添付ファイルののファイル名のエンコードに data-uri を使用しないようになった
- 変更
- 宛先ごとあるいはドメインごとの送信メッセージの形式の指定を除去し、送信オプションを編集設定に移動
- 変更
- メールアカウントを設定しない状態でも Thunderbird を利用できるようになった
- 変更
- NNTP アカウントのセットアップに独自のものが利用されるようになり、その他のアカウントのウィザードが除去された
- 変更
- アカウントマネージャーの UI を更新
- 変更
- メールアカウントのセットアップをタブに移行
- 変更
- アカウントセットアップウィザードにおいて「メールアドレス」の内容が空でない場合、新しいメールアドレスの取得へのリンクが表示されないようになった
- 変更
- アドオン検索において互換性のないアドオンは表示されないようになった
- 変更
- アドオンマネージャーのテーマページからの検索結果はテーマのみになった
- 変更
- FileLlink テンプレートにダウンロードの制限、期限、パスワードのためのフィールドが追加された
- 変更
- FileLink へのアップロード前に十分な空き容量があるかチェックされるようになった
- 変更
- アドレス帳から”PreferMailFormat” プロパティを除去
- 変更
- アドレス帳のデータが vCard 形式で保存されるようになった。この変更は後方互換性は確保されていない。バックアップはプロファイルフォルダーに保存されている
- 変更
- ベータ版の既定のインストール先がリリース版とは異なるものとなった
- 変更
- タブアイコンの更新
- 変更
- メッセージのヘッダーツールバーボタンを「アイコンのみ」表示にしている場合、ボタンの境界線を表示しないようになった
- 変更
- IMAP の受信ボックスではないフォルダーの新着メッセージ検出を改善
- 変更
- 新しい Javascript による NNTP 実装を既定で有効化。無効化するには
mailnews.nntp.jsmodule
をfalse
に - 変更
- OTR 暗号化された会話のログ取得の設定をプロトコル設定に移動
- 変更
- プロトコルが独自の暗号化をサポートする場合、チャットの OTR 暗号化を行わないようになった
- 変更
- IRC や XMPP チャットルームに招待されると、参加するかどうかのプロンプトが表示されるようになった
- 変更
- Today ペインの UI を更新
- 変更
- 毎秒、毎分の繰り返しの予定をサポートしなくなった
- 変更
- 繰り返しの予定の「編集」ボタンの既定の動作がサブメニューの表示に変更された
- 変更
- Outlook の CSV 形式のカレンダーのインポート、エクスポート機能を除去
- 変更
- キャッシュを保存したカレンダーの Thunderbird 起動時の更新を遅延して行うようになった
- 変更
- Javascript による Ical パーサー (ical.js) を既定で有効化
- 修正
- “cid:” リンクを開けない問題を修正
- 修正
- メッセージのダウンロードの進行状況の計算が正しくない問題を修正
- 修正
- メッセージのソース表示で Ctrl + マウスホイールによるズームが機能しない問題を修正
- 修正
- スタンドアロンのウインドウでフォルダー内のメッセージを開く動作が機能しない問題を修正
- 修正
- 複数メッセージビューでのスクロールが完全ではない問題を修正
- 修正
- 迷惑メールのステータスを変更した後、すべてのウインドウ内のメッセージが再読み込みされない問題を修正
- 修正
- 分離した添付ファイルが、指定した保存先ではなく一時フォルダーから開かれる問題を修正
- 修正
- OAuth2 認証を利用するサーバー上での IMAP フォルダーの購読状況の変更が、Thunderbird を再起動しないと反映されない問題を修正
- 修正
- 外部 GnuPG 設定に関するエラー報告の改善
- 修正
- 第二の差出人情報に対して不適切な OpenPGP の設定が使用される問題を修正
- 修正
- 有効期限を設定されていない OpenPGP 鍵に対して新たに有効期限を設定できない問題を修正
- 修正
- OpenPGP 鍵の有効期限の変更後も UI 上に古い有効期限が表示される問題を修正
- 修正
- 巨大な OpenPGP 鍵のインポートに失敗する問題を修正
- 修正
- OpenPGP の「メッセージを修復」ボタンが機能しないことがある問題を修正
- 修正
- ヘッダーの後に空行が存在しない OpenPGP 公開鍵のインポートに失敗する問題を修正
- 修正
- OpenPGP の CollectedKeysDB が重複することがある問題を修正。失効証明書が CollectedKeysDB に保存されない問題を修正
- 修正
- 複数の添付ファイルをウインドウを跨いでドラッグ & ドロップすると、コピーされない添付ファイルがある問題を修正
- 修正
- メッセージ作成ウインドウの添付ファイルバーにキーボード操作でアクセスできない問題を修正
- 修正
- メッセージ作成ウインドウでの宛先選択において不適切なフィールドが入力として使用される問題を修正
- 修正
- メッセージ作成の通知バーにキーボード操作でアクセスしにくい問題を修正
- 修正
- 「メッセージを保存」確認ダイアログのボタンを方向キーで操作できない問題を修正
- 修正
- メッセージ作成ウインドウにおいて、連絡先サイドバーを閉じるとフォーカスがジャンプする問題を修正
- 修正
- 空のメッセージ作成ウインドウを閉じると誤って保存ダイアログが表示される問題を修正
- 修正
- ファイル→新規作成→メッセージのアクセスキーを修正
- 修正
- メッセージ作成ウインドウにおいて、複数の宛先を選択した状態でフォーカスを移動してもすべての宛先が選択解除されないことがある問題を修正
- 修正
- SMTPUTF8 をサポートしないサーバーに対してローカルパートに非 ASCII 文字を含む宛先にメッセージを送信すると、予期せず失敗する問題を修正
- 修正
- LDAP 自動設定が Thunderbird の起動を阻害することがある問題を修正
- 修正
- インポート/エクスポート機能の改善
- 修正
- 同じサーバーを使用する SMTP アカウントを複数設定できない問題を修正
- 修正
- OAuth2 認証を利用する IMAP アカウントにおいて「終了時にごみ箱を空にする」が機能しない問題を修正
- 修正
- IMAP サーバーのホスト名の変更がフォルダーのプロパティーダイアログに反映されない問題を修正
- 修正
- アドオンが無効化された状態でも、Thunderbird を更新するとアドオンも自動的に更新される問題を修正
- 修正
- メッセージのサイズ計算に誤って FileLink での添付ファイルのサイズも含まれていた問題を修正
- 修正
- 添付ファイルを FileLink から通常に戻した後、プライバシー通知が消えない問題を修正
- 修正
- FileLink プロバイダーの変更に失敗すると添付ファイル自体が完全に除去されてしまう問題を修正
- 修正
- アカウント設定タブから CardDAV 形式のアドレス帳を購読しても、選択したすべてのアドレス帳が購読されない問題を修正
- 修正
- アドオンによるアドレス帳が存在すると CardDAV 形式のアドレス帳を追加できない問題を修正
- 修正
- Message-Id ヘッダーが 332 文字より長いメッセージを転送できない問題を修正
- 修正
- サーバーへの接続に失敗すると SMTP 送信状況バーの CPU 使用率が高くなる問題を修正
- 修正
- アカウントセットアップでの POP サーバーの認証方式の検出を改善
- 修正
- ニュースフォルダーが新着メッセージ通知に表示されない問題を修正
- 修正
- 他のクライアントによる IMAP のフラグ変更が反映されないことがある問題を修正
- 修正
- 宛先の重複を解消しないままメッセージを送信しようとすると送信エラーになる問題を修正
- 修正
- チャットの会話のコンテキストメニューがリンクを認識しない問題を修正
- 修正
- チャットのプロトコルの変更後、アカウントウィザード上でのユーザー名のスプリットが機能しない問題を修正
- 修正
- 使われなくなった独自仕様のチャットアカウントの除去が機能しない問題を修正
- 修正
- FreeBSD: チャットのOTR 暗号化が機能しない問題を修正
- 修正
- 予定への招待を選択した状態で、予定の編集ツールバーボタンが無効化されない問題を修正
- 修正
- 右から左へ表示される言語版において、予定の表示のヘッダーと内容がまっすぐに表示されない問題を修正
- 修正
- 小さい月ごとの表示が日を跨いでも更新されない問題を修正
- 修正
- いくつかの言語版においてカレンダーのラベルの一部が表示されない問題を修正
- 修正
- 読み込み専用の予定の件名がインラインで編集可能になっていた問題を修正
- 修正
- タブを切り替えるとカレンダーの表示が再読み込みされる問題を修正
- 修正
- 不正な日付での毎年の予定を作成可能な問題を修正
- 修正
- vCalendar 形式の添付ファイルの検出を改善
- 修正
- 他のユーザーによって作成された予定のリマインダーを閉じることができない問題を修正
- 修正
- Google Calendar に保存された Microsoft Teams での会議の予定の詳細を読めない問題を修正
- 修正
- Gmail ではないメールアドレス、あるいは googlemail である Gmail メールアドレスに紐づいた Google Calendar を追加できない問題を修正
- 修正
- 繰り返しの予定の例外を受け入れると、例外ではなくオリジナルの予定を受け入れてしまう問題を修正
セキュリティ修正
このアップデートでのセキュリティ問題への修正は合計 10 件、重要度区分において 高 4 件、中 6 件が修正されている。
- CVE-2022-34479
- A popup window could be resized in a way to overlay the address bar with web content
- CVE-2022-34470
- Use-after-free in nsSHistory
- CVE-2022-34468
- CSP sandbox header without `allow-scripts` can be bypassed via retargeted javascript: URI
- CVE-2022-2226
- An email with a mismatching OpenPGP signature date was accepted as valid
- CVE-2022-34481
- Potential integer overflow in ReplaceElementsAt
- CVE-2022-31744
- CSP bypass enabling stylesheet injection
- CVE-2022-34472
- Unavailable PAC file resulted in OCSP requests being blocked
- CVE-2022-34478
- Microsoft protocols can be attacked if a user accepts a prompt
- CVE-2022-2200
- Undesired attributes could be set as part of prototype pollution
- CVE-2022-34484
- Memory safety bugs fixed in Thunderbird 91.11 and Thunderbird 102
Thunderbird 102.0 で修正された全ての問題は Mozilla.org bugs fixes (英語) を参照されたい。
その他、Thunderbird 102.0 についての一般的な情報は Thunderbird 102.0 リリースノート を参照いただきたい。
アップデート及びシステム要件
Thunderbird 102.0 は Windows, Mac, Linux 版が用意され、Mozilla ウェブサイトよりダウンロード可能となっている。また、50 以上の言語に対応した各国語版は 各国語版のダウンロード よりダウンロードできる。
Thunderbird 102.0 の利用に必要なシステム要件については、Thunderbird 102.0 システム要件 を参照されたい。
- ダウンロード:
- Mozilla
- リリースノート:
- Thunderbird 102.0 リリースノート
- セキュリティアドバイザリ:
- MFSA 2022-26
- 修正されたバグ:
- Bug Fixes (英語)