Thunderbird 78.0 がリリースされた
Mozilla は米国時間 2020 年 7 月 17 日、新機能の追加及び安定性の問題を修正した Thunderbird のメジャーアップデート版である Thunderbird 78.0 をリリースした。
Thunderbird 78.0 は Firefox 78 と同じレンダリングエンジンを搭載しており、バックエンドも Firefox ESR 78 相当となっている。
Thunderbird 78 は、thunderbird.net からの直接ダウンロードによってのみ提供され、Thunderbird 68 およびそれ以前のバージョンからの自動アップグレードは行われない。今後リリースされるバージョンにおいて、自動アップグレードが行われる予定である。
本リリースから、アドオンのサポートについて大きな変更が行われている。Firefox と同様、旧式のアドオンのサポートが終了し、MailExtension 形式のみのサポートとなる。現在利用中のアドオンが更新されているか確認されたい。
Enigmail を利用中のユーザーは、現時点では Thunderbird 78 へ更新するべきではない。Thunderbird 78 では Enigmail のサポートは終了し、Thunderbird 本体に OpenPGP 機能が追加される。しかし、バージョン 78.0 の時点ではその実装は完全ではなく既定では無効化されているため、バージョン 78.0 に更新するとメッセージの暗号化・署名機能を利用することができなくなる。自動アップグレードの開始までは、68.x 系列の利用を継続することが推奨される。テスト目的での OpenPGP 機能の有効化については こちらの記事 を参照されたい。
Thunderbird 78.0 での新機能や改良点は次のとおり。
新機能及び改良点
- 新機能
- 集中化されたアカウントセットアップのための新しいアカウントハブ
- 新機能
- 再デザインされたアドレスフィールド。これまでのアドレスごとに一行ずつ必要だったものから、複数のアドレスを一行にまとめて入力できるようになった。今後も改善が予定されている
- 新機能
- フォルダーペインアイコンの色のカスタマイズ
- 新機能
- 従来の選択方法に代わり、選択ボックスからメッセージを選択できるようになった。スレッドペインのピッカーから「メッセージを選択」カラムを選択する必要がある
- 新機能
- スレッドペインにおいて「メッセージを削除」を行えるようになった。スレッドペインのピッカーから「メッセージを選択」カラムを選択する必要がある
- 新機能
- アドオンマネージャー上でテーマのプレビューが可能となった
- 新機能
- Windows: タスクトレイへの最小化が可能となった
- 新機能
- 匿名化したメッセージ日時ヘッダーのための新しい設定オプション
- 新機能
- アプリケーションメニューへのグローバル検索メニューアイテムの追加
- 新機能
- 新しいエンタープライズポリシー
- 新機能
- カレンダー: -file コマンドラインオプションにおける ICS 形式でのインポートのサポート
- 新機能
- カレンダー: ICS インポートダイアログでのイベントプレビュー
- 新機能
- チャット: OTR メッセージのサポート
- 新機能
- チャット: IRC エコーメッセージ
- 変更
- アドオン: 旧式のアドオン (再起動不要、必要を問わず XUL オーバーレイを利用するもの) のサポートが終了し、MailExtension および MailExtension Experiments 形式のみのサポートとなる
- 変更
- Linux における 最低システム要件 が変更された。本リリースより GNU libc 2.17, libstdc++ 4.8.1, GTK+ 3.14 以降が必要となる (バージョン 68 までは GNU libc 2.17, libstdc++ 4.7 以降であった)
- 変更
- オプション/設定タブの新しいインターフェイスによる再デザイン
- 変更
- アカウント作成ダイアログの新しいインターフェイスによる再デザイン
- 変更
- アカウントマネージャーがタブに移動された
- 変更
- 新しいインターフェイスと通知によるアドオンマネージャー
- 変更
- メッセージのコンテキストメニューの「メッセージを移動」「メッセージをコピー」における「使用履歴」フォルダーリストの改善
- 変更
- グローバル検索結果タブの UI の改善
- 変更
- タブで表示されたウェブページのロケーションバーの改善
- 変更
- Thunderbird 全体でのサイズ可変アイコンの採用。これにより高 DPI 環境およびダークモードのサポートが改善される
- 変更
- 保存されたログイン情報の表示の際に OS のアカウントパスワードを尋ねるようになった
- 変更
- 将来の改善に備え、アドレス帳が SQLite データベースに保存されるようになった。既存の MAB 形式 (Mork データベース) のアドレス帳は自動的に変換される予定
- 変更
- vCard 3.0 および 4.0 サポートのための新しいパーサー、フォーマッター
- 変更
- テーマおよびダークモードにおける多くの改善
- 変更
- 外観と操作感の改善
- 変更
- フォルダーの最適化ダイアログの改善
- 変更
- グラフィックのハードウェアアクセラレーションが既定で有効化された
- 変更
- TLS 1.0 および 1.1 が既定で無効化 された
- 変更
- カレンダー: カレンダーアドオンである Lightning が Thunderbird に統合された
- 変更
- カレンダー: Lightning のバージョンが Thunderbird のユーザーエージェント文字列に含まれなくなった
- 変更
- カレンダー: Web Calendar Access Protocol (WCAP) のサポートを除去
- 変更
- カレンダー: ストレージへのアクセスが非同期となり、パフォーマンスが向上
- 変更
- カレンダー: 「場所」の URL がクリック可能となった
- 変更
- アドオン開発者向け: MailExtensions API の更新および拡張 (詳細)
- 修正
- パスワード表示のためのフォントに読みにくい文字が含まれている問題を修正
- 修正
- IMAP フォルダーからローカルフォルダーにメッセージをコピーするときに、オフラインストアが利用されない問題を修正
- 修正
- セーフモードにおいて、ヘルプメニューに「アドオンを有効にして再起動」アイテムが表示されない問題を修正
- 修正
- メールボックスのクォータが正しく表示されない問題を修正
- 修正
- メッセージの作成時に画像が回転されない問題を修正
- 修正
- メッセージ作成時にメールアドレスが正しく表示されないことがある問題を修正
- 修正
- アクセシビリティに関する多くの修正と改善: メッセージ作成ウインドウ、アカウントセットアップ、添付ファイルペイン
- 修正
- メールボックスのフォーマット変換に関する問題を修正
- 修正
- アドレス帳の改善: エクスポート、連絡先の編集、写真
- 修正
- チャット: コンテキストメニューにおける連絡先の名前の変更が機能しない問題を修正
- 修正
- カレンダー: ToDo と予定のダイアログがコンテンツに対して小さすぎることがある問題を修正
- 修正
- カレンダー: 予定のリマインダーダイアログ中の URL をクリックできない問題を修正
セキュリティ修正
このアップデートでのセキュリティ問題への修正は合計 14 件、重要度区分において 高 7 件、中 5 件、低 2 件が修正されている。
- CVE-2020-12415
- AppCache manifest poisoning due to url encoded character processing
- CVE-2020-12416
- Use-after-free in WebRTC VideoBroadcaster
- CVE-2020-12417
- Memory corruption due to missing sign-extension for ValueTags on ARM64
- CVE-2020-12418
- Information disclosure due to manipulated URL object
- CVE-2020-12419
- Use-after-free in nsGlobalWindowInner
- CVE-2020-12420
- Use-After-Free when trying to connect to a STUN server
- CVE-2020-15648
- X-Frame-Options bypass using object or embed tags
- CVE-2020-12402
- RSA Key Generation vulnerable to side-channel attack
- CVE-2020-12421
- Add-On updates did not respect the same certificate trust rules as software updates
- CVE-2020-12422
- Integer overflow in nsJPEGEncoder::emptyOutputBuffer
- CVE-2020-12423
- DLL Hijacking due to searching %PATH% for a library
- CVE-2020-12424
- WebRTC permission prompt could have been bypassed by a compromised content process
- CVE-2020-12425
- Out of bound read in Date.parse()
- CVE-2020-12426
- Memory safety bugs fixed in Thunderbird 78
既知の問題
- 未解決
- メールヘッダーのツールバー (返信、転送、アーカイブ、迷惑メールのボタン) がカスタマイズできない
- 未解決
- 設定の検索ができない
- 未解決
- アドレス帳の連絡先のドラッグ & ドロップができないことがある
Thunderbird 78.0 で修正された全ての問題は Mozilla.org bugs fixes (英語) を参照されたい。
その他、Thunderbird 78.0 についての一般的な情報は Thunderbird 78.0 リリースノート を参照いただきたい。
アップデート及びシステム要件
Thunderbird 78.0 は Windows, Mac, Linux 版が用意され、Mozilla ウェブサイトよりダウンロード可能となっている。また、50 以上の言語に対応した各国語版は 各国語版のダウンロード よりダウンロードできる。
Thunderbird 78.0 の利用に必要なシステム要件については、Thunderbird 78.0 システム要件 を参照されたい。Firefox 78 と同様 Linux における最低システム要件が変更されており、本リリースより GNU libc 2.17, libstdc++ 4.8.1, GTK+ 3.14 以降が必要となる (バージョン 68 までは GNU libc 2.17, libstdc++ 4.7 以降であった)。
- ダウンロード:
- Mozilla
- リリースノート:
- Thunderbird 78.0 リリースノート
- セキュリティアドバイザリ:
- MFSA 2020-29
- 修正されたバグ:
- Bug Fixes (英語)