Firefox 78 がリリースされた
Mozilla は米国時間 2020 年 6 月 30 日、安定性及びセキュリティ問題の修正を含む Firefox のメジャーアップデート版である Firefox 78.0 をリリースした。延長サポート版である Firefox ESR もバージョン 68.10.0 にアップデートされているほか、ESR 78.0 もリリースされている。
Firefox 78 は macOS バージョン 10.9, 10.10, 10.11 をサポートする最後のメジャーバージョンとなる。これらのバージョンの macOS を利用している場合には、延長サポート版 (ESR) 78.x が来年まで継続してリリースされるためそちらへ移行されたい。
Firefox 78.0 での新機能や改良点、セキュリティ修正、既知の問題は次のとおり。
新機能及び改良点
- 新機能
- プライバシー保護ダッシュボード に、トラッキング保護・データ漏洩・パスワード管理を統合したレポートが表示されるようになった:
- データ漏洩がいくつ解決したか
- 未解決のパスワード漏洩がいくつあるか
プライバシー保護ダッシュボードを表示するには、アドレスバーに about:protections と入力するか、メインメニューから「プライバシー保護ダッシュボード」を選択する
- 新機能
- Firefox のリフレッシュによる問題解決が適切な場合 にもユーザーによる再インストールが試みられることが多いことから、アンインストーラーにリフレッシュのためのボタンが追加された
- 新機能
- スクリーンセーバーにより Firefox による WebRTC コールが阻害されることがなくなり、ビデオ会議などの利便性が向上した
- 新機能
- WebRender が Intel GPU 搭載の Windows ユーザーで利用可能となった
- 新機能
- Firefox 78 は新しい延長サポート版 (ESR) でもある。前回の ESR 版から本リリースまでの 10 のメジャーアップデートによって導入された機能の一部を紹介する:
- キオスクモード
- クライアント証明書
- Service Worker および Push API
- 自動再生のブロック
- ピクトインピクチャー
- about:certificate からのウェブ証明書の閲覧・管理
- 新機能
- Pocket からのおすすめ がイギリスのすべての利用者に表示されるようになった。新しいタブに Pocket の記事が表示されない場合は サポート記事 を参照されたい
- 修正
- パートナーからの助言に基づく、検索結果の品質向上のためのバグ修正
- 変更
- Linux における 最低システム要件 が変更された。本リリースより GNU libc 2.17, libstdc++ 4.8.1, GTK+ 3.14 以降が必要となる (バージョン 77 までは GNU libc 2.17, libstdc++ 4.7 以降であった)
- 変更
- 古い暗号化機能の廃止に向けた努力の一環として、DHE ベースの TLS 暗号化スイートがすべて既定で無効化された (TLS_DHE_RSA_WITH_AES_128_CBC_SHA および TLS_DHE_RSA_WITH_AES_256_CBC_SHA)
- DHE ベースの TLS 暗号化スイートの無効化に伴うウェブ互換性の問題に対応するため、これまで非対応であったAES-GCM SHA2 ベースの暗号化スイート 2 つが利用可能となった (TLS_RSA_WITH_AES_128_GCM_SHA256 および TLS_RSA_WITH_AES_256_GCM_SHA384)
- 変更
- TLS 1.0 および 1.1 を再度無効化 した (これは、バージョン 74 で一度無効化されたものが、新型コロナウイルスの問題を受けて撤回・延期 されていたものである)。TLS 1.2 以降に対応していないウェブサイトではエラーページが表示される
- 変更
- コンテキストメニュー (タブ上で右クリックによる表示されるもの) からワンクリックで複数の閉じたタブを一度に元に戻すことが可能となった。また、「右側のタブをすべて閉じる」および「ほかのタブをすべて閉じる」が「複数のタブを閉じる」下のサブメニューに移動された
- 変更
- アクセシビリティ機能の向上
- JAWS スクリーンリーダー環境において、データリストのある HTML インプットコントロール内で下矢印キーを押してもカーソルが誤ってインプットコントロールの次の要素へ移動してしまう問題を修正
- マイクロホン/カメラ/スクリーンの共有インジケーターにフォーカスしたときにスクリーンリーダーが大幅に遅延あるいはフリーズする問題を修正
- スクリーンリーダー環境において、数千におよぶ行・列のある巨大なテーブルの読み込みを大幅に高速化
- カスタムスタイルを持つテキストインプットコントロールにおいて適切なフォーカスアウトラインが表示されるようになった
- スクリーンリーダー環境において、開発者ツールのメインウインドウに入ったときにドキュメント閲覧モードが不適切に変更されてしまう問題を修正
- 偏頭痛・てんかんのユーザーへの配慮として、タブのホバー、検索バーの拡張などのアニメーションの削減
- Enterprise
- macOS および Windows: OS の証明書ストアに保存されているクライアント証明書の実験的サポート (security.osclientcerts.autoload を true にセット)
- Enterprise
- アプリケーションハンドラー、ピクチャーインピクチャーの無効化、マスターパスワードの必須化のための新しいポリシー
- Enterprise
- エンタープライズ用途向けの詳細は Firefox for Enterprise 78 リリースノート を参照されたい
- 開発者
- 開発者ツールコンソールにキャッチできなかった Promise のエラーが詳細な名前・スタック・プロパティとともに記録されるようになり、JavaScript フレームワークのデバッグが向上
- 開発者
- 圧縮された変数のためのデバッガーの自動マッピングが Logpoints でも機能するようになった
- 開発者
- 開発者ツールのネットワークパネルにおいて、どの拡張やオリジン間リソース共有制限がリクエストをブロックしているかがハイライト表示されるようになった
- 開発者
- dotAll フラグ・Unicode エスケープシークエンス・後読み参照・名前付きキャプチャをサポートした SpiderMonkey の新しい 正規表現 エンジン
セキュリティ修正
このアップデートでのセキュリティ問題への修正は合計 13 件、重要度区分において 高 7 件、中 4 件、低 2 件が修正されている。
- CVE-2020-12415
- AppCache manifest poisoning due to url encoded character processing
- CVE-2020-12416
- Use-after-free in WebRTC VideoBroadcaster
- CVE-2020-12417
- Memory corruption due to missing sign-extension for ValueTags on ARM64
- CVE-2020-12418
- Information disclosure due to manipulated URL object
- CVE-2020-12419
- Use-after-free in nsGlobalWindowInner
- CVE-2020-12420
- Use-After-Free when trying to connect to a STUN server
- CVE-2020-12402
- RSA Key Generation vulnerable to side-channel attack
- CVE-2020-12421
- Add-On updates did not respect the same certificate trust rules as software updates
- CVE-2020-12422
- Integer overflow in nsJPEGEncoder::emptyOutputBuffer
- CVE-2020-12423
- DLL Hijacking due to searching %PATH% for a library
- CVE-2020-12424
- WebRTC permission prompt could have been bypassed by a compromised content process
- CVE-2020-12425
- Out of bound read in Date.parse()
- CVE-2020-12426
- Memory safety bugs fixed in Firefox 78
Firefox 78.0 で修正された全ての問題は Mozilla.org bugs fixes (英語) を、一般的な情報は リリースノート を、開発者向けの情報は MDN および Mozilla Developer YouTube チャネル を参照されたい。
アップデート及びシステム要件
Firefox 78.0 は Windows, Mac そして Linux 版が用意され、Mozilla ウェブサイトよりダウンロード可能となっている。また、80 以上の言語に対応した各国語版は 次世代ブラウザ Firefox – 各国語版のダウンロード よりダウンロード可能となっている。また、既存の Firefox 4 以降のユーザには自動アップデート経由で通知されるが、Firefox メニューの “Firefox について” より手動でアップデートすることも可能だ。
Firefox 78.0 の利用に必要なシステム要件については、Firefox 78 システム要件 を参照されたい。macOS における OS 要件および Linux におけるシステム要件の変更に注意されたい。
- ダウンロード:
- 78.0, ESR 78.0, ESR 68.10.0
- リリースノート:
- 78.0, ESR 78.0, ESR 68.10.0
- セキュリティアドバイザリ:
- MFSA 2020-24 (78.0, ESR 78.0), MFSA 2020-25 (ESR 68.10.0)
- 修正されたバグ:
- 78.0, ESR 78.0, ESR 68.10.0 (英語)