Thunderbird 52 がリリースされた
Mozilla は米国時間 2017 年 4 月 4 日、安定性及びセキュリティ問題を修正した Thunderbird のメジャーアップデート版である Thunderbird 52.0 をリリースした。
Thunderbird 52.0 は Firefox 52 と同じレンダリングエンジン Gecko 52 を搭載しており、バックエンドも Firefox 52 相当となっている。
Thunderbird 52.0 での新機能や改良点、セキュリティ修正、既知の問題は次のとおり。既定の文字エンコーディングが Unicode (UTF-8) へ変更されるなど、日本語環境において影響を及ぼすを思われる変更点もあるため注意が必要である。
新機能及び改良点
- 新機能
- フォルダーペインツールバーとフォルダービューセレクターを追加 (フォルダービューの矢印ボタンを置き換え)
- 新機能
- Thunderbird からアカウントを削除する際、任意で関連データを削除できるようになった
- 新機能
- Becky! Internet Mail から設定をインポートできるようになった
- 新機能
- メッセージフィルターをコピーできるようになった
- 新機能
- 下書き編集時に辞書設定を復元するようになった (
Content-Language
ヘッダー (RFC 3282) をメッセージに付随して保存することで実現) - 新機能
- カレンダー: タブ内でイベントの作成と編集な可能になった
- 新機能
- カレンダー: 受信した招待メッセージのカウンター提案処理を追加
- 新機能
- チャット: Twitter のダイレクトメッセージに対応
- 新機能
- チャット: Twitter のツイートに「いいね」できるようになった
- 新機能
- チャット: XMPP で SASL SCRAM 認証機構に対応
- 新機能
- チャット: Jabber/XMPP メッセージカーボン (XEP-280) に対応
- 変更
- 重要: 日本語版で、既定の文字エンコーディングを ISO-2022-JP から Unicode (UTF-8) へ変更。現在では各種メールクライアントにおいて Unicode 対応が改善されており、問題が生じる可能性は少ないと思われるが、何らかの理由で設定を戻す必要がある場合は、オプション画面の [表示] > [書式] > [フォントと配色] > [詳細設定] を開き、エンコーディングを変更できる
- 変更
- 重要: メッセージ編集ウィンドウにおける画像の追加方法が変更。従来は他のメッセージの一部や OS 上のファイルへの参照であったが、今後は
data
URI として追加されるようになる。これにより、MS Office や LibreOffice といったオフィスパッケージとの相互運用性が向上する。インターネット上の場所からリンクされた画像は、自動的にダウンロードされてメッセージへ添付されることがなくなる。この挙動は、各画像のプロパティダイアログで個別に、あるいはmail.compose.attach_http_images
設定で全体的に変更することもできる。 - 変更
- 「通信相手」列をすべての新規フォルダーに適用するようになった (
mail.threadpane.use_correspondents
設定で無効化できる) - 変更
- メーリングリストへの返信時に、From ヘッダー内のアドレスに対して送信し、Reply-to ヘッダーを無視するようになった
- 変更
- Linux で音声の再生に PulseAudio が必要となった
- 変更
- 送信形式がプレーンテキストのみに切り替えられた際に、書式ツールバーが表示されたままになった
- 変更
- 外付け端末から読み込まれた IMAP フォルダー内のメッセージに対して初期設定でフィルターが適用されるようになった
- 変更
- 4 GB 以上の mbox ストレージに保存されたフォルダーを警告なしに読み込むようになった (
mailnews.allowMboxOver4GB
設定がfalse
に設定されていない限り) - 変更
- IMAP のキャッシュに Mozilla の最新キャッシュ技術を採用
- 変更
- チャット: Yahoo! Messenger 対応を削除 (Yahoo! が対応を廃止したため)
- 修正
- IMAP フォルダーの名前変更後や削除後にメッセージプレビューペインが動作しなくなる問題を修正
- 修正
- 段落形式での編集時に、Shift+Enter キーを押しても次の行へカーソルが移動しないことがある問題を修正
- 修正
- 段落形式でのメッセージ編集時に見られた様々な問題を修正
- 修正
- 引用文として貼り付けが動作しないことがある問題を修正
- 修正
- プレーンテキスト形式での返信時に、長い行が適切に折り返されない問題を修正
- 修正
- 段落モード時に署名の前に不要な空白が入る問題を修正
- 修正
- 編集画面で添付ファイルを追加できなかった場合に、エラーではなく「添付しています…」というメッセージが表示され続ける問題を修正
- 修正
- 返信メッセージの文字エンコーディングが正しくない場合がある (最後に表示されたメッセージのエンコーディングが使用されてしまう) 問題を修正
- 修正
- メッセージの表示、返信、あるいは転送されたメッセージの文字エンコーディングが正しくない場合がある (添付ファイルのエンコーディングが使用されてしまう) 問題を修正
- 修正
- 保存された下書きの送信形式 (自動判別、プレーンテキスト、HTML、両方) が維持されない問題を修正
- 修正
- 自分のメールに対して返信する際に、適切な差出人情報が選択されない問題を修正
- 修正
- IMAP メッセージが部分的にキャッシュされてしまう問題を修正
- 修正
- エスケープされた非 ASCII (国際) 文字を含むリンクがクリックできない問題を修正
- 修正
- カレンダー: タイムゾーンが「現地時間」に指定されたイベントのアラートが UTC 時刻に表示される問題を修正
- 修正
- チャット: XMPP のリソース競合を修正
セキュリティ修正
このアップデートでのセキュリティ問題への修正は Firefox 52 に準じる。
既知の問題
- 未解決
- メッセージ中のリンクをクリックしても外部ブラウザーで正常に開かれない (バージョン 52.0.1 で修正予定)
- 未解決
- 特定の状況下で大量の空白ページが印刷されてしまう
- 未解決
- オフライン用の同期が行われていない IMAP フォルダーにメッセージが保管されている場合、大きな添付ファイルが正しく表示あるいは保存されない (回避策:
browser.cache.memory.max_entry_size
の設定値を-1
(無制限) に変更した上で、整数設定browser.cache.memory.capacity
を作成し、その値を200000
(200 MB、メッセージ 1 通につき 25 MB) とする) - 未解決
- McAfee Anti-Spam アドオンとの非互換性によってクラッシュが発生する (回避策: セーフモードで起動し、このアドオンを無効化)
- 未解決
- 背景画像が表示されないなど、メッセージ編集時の埋め込み画像に関して問題が発生する
- 未解決
- IMAP フォルダーの最適化中にクラッシュが発生する
Thunderbird 52.0 で修正された全ての問題は Mozilla.org bugs fixes (英語) を参照されたい。
その他、Thunderbird 52.0 についての一般的な情報は Thunderbird 52.0 リリースノート を参照いただきたい。
アップデート及びシステム要件
Thunderbird 52.0 は Windows, Mac そして Linux 版が用意され、Mozilla Japan ウェブサイトよりダウンロード可能となっている。また、50 以上の言語に対応した各国語版は 各国語版のダウンロード よりダウンロード可能となっている。また、既存の Thunderbird 5 以降のユーザには自動アップデート経由で通知されるが、Thunderbird メニューの “Thunderbird について” より手動でアップデートすることも可能だ。
Thunderbird 52.0 の利用に必要なシステム要件については、Thunderbird 52.0 システム要件 を参照されたい。
- ダウンロード:
- Mozilla Japan
- リリースノート:
- Thunderbird 52.0 リリースノート
- 修正されたバグ:
- Bug Fixes (英語)